男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版で低出力レーザーが推奨度Bに認められる!
今回は、2017年12月20日に発表された「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」についてご紹介します。
男性型脱毛症診療ガイドラインは、2010年版からしばらく更新されていませんでしたが、7年ぶりに2017年版が公開され、男性型脱毛症(AGA)だけでなく、女性型脱毛症(FAGA)対応の診療ガイドラインになっています。
2017年版のAGA診療ガイドラインは、日本皮膚科学会のサイトでご覧いただけます。
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
~男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版とは?~
日本皮膚科学会が作成するガイドラインとは、各種皮膚疾患の最も標準的かつ最善と思われる診療を提示するもので、症状ごとに適切な処置方法を科学的根拠に基づき専門家がまとめた指針です。
「薄毛・脱毛症の診療現場においてどのような処方をするべきなのか?」という視点で、医学的根拠の高い治療法(医薬品・医療機器・植毛)などの情報を独自に研究して有効性を高めようと発行されているものです。
~診療ガイドラインの作成者は?~
日本皮膚科学会と毛髪化学研究会の共同事業で、毛髪疾患に詳しい医師は中心となって作成されています。
~診療ガイドラインの推奨度の根拠は?~
医学会で発表された論文や、臨床実験や研究などの科学的エビデンスがあるものを参考に作成されています。保険医療では認められていない治療法や治療薬であっても、医学的根拠がある場合は取り上げられています。
基本的にあ科学的根拠、エビデンスがあるものを中心に選定されていますが、薄毛治療の分野は国際的にもエビデンスが不足している状況ですので、専門委員会や専門家個人の意見もふまえた上で推奨度を決定しているようです。
推奨度 | 推奨度の分類 |
A | 行うように強く勧める |
B | 行うように勧める |
C1 | 行ってもよい |
C2 | 行わないほうがよい |
D | 行うべきではない |
~LEDおよに低出力レーザー照射の追加~
2010年の男性型脱毛症診療ガイドラインの発表後、多くの成分が開発・登場したため若干の時代遅れ感がありましたが、2017年の男性型および女性型脱毛症診療ガイドラインでは、
「LEDおよに低出力レーザー照射は有用か?」というClinical Questionが加えられ、
推奨度はB、つまり男女共に行うように勧めると認められています。
以下原文を抜粋:
CQ5:LEDおよび低出力レーザー照射は有用か?
推奨度:B
推奨文:LED及び低出力レーザー照射を行うよう勧める.
解説:LED及び低出力レーザー照射の有用性に関して,男性型脱毛症に対する4件のランダム化比較試 験73)~76),1件の非ランダム化比較試験77),女性型脱毛症 に対する3件のランダム化比較試験75)76)78)が実施されている.
先ず男性型脱毛症に関して,655 nm低出力レーザー・(週3回照射)を用いた,110名の男性被験者を 対象とした観察期間26週間のランダム化試験において73),低出力レーザー照射群では照射前に比較して毛髪数は19.8本/cm2増加し,コントロール群(対象赤色 光源)では7.6本/cm2 減少した.またレーザー照射後 の副作用は4例で軽度の照射部の異常知覚,4例で軽 度の蕁麻疹が生じた.
次いで女性型脱毛症に関して,9-beamレーザー照射装置(655 nm)と12-beamレーザー照射装置(6beam635 nm,6beam-655 nm)(週3回照射)を用いた,女性122名の被験者を対象とした観察期間26週間のランダム化試験において75),成長期毛の数は,女性において9-beamレーザー照射群は20.2本/cm2(コントロー ル群2.8本/cm2),12-beamレーザー照射群は20.6本/ cm2(コントロール群3.0本/cm2)と有意に増加していた.また男性でも同様に有意にレーザー照射群の毛髪が増加していた.レーザー照射後の副作用は,照射部 皮膚の乾燥が5.1%,瘙痒が2.5%,圧痛が1.3%,ひりつきが1.3%,温熱感が1.3%であった.
以上のように,LEDおよび低出力レーザーの発毛効果に関しては,有用性を示す十分な根拠があり,副作 用も比較的軽微であることから,適切な機材を使用して行うよう勧めることにする.
ただし,上記の機器は国内ではまだ認可されておらず,用いられる光源の種類,波長,出力は報告によって様々ある.
文献
73) Leavitt M, Charles G, Heyman E, et al: HairMax LaserComb laser phototherapy device in the treatment of male androgenetic alopecia: A randomized, double-blind, sham device-controlled, multicentre trial, Clin Drug Investig , 2009; 29: 283―292(. レベルII) 74) Lanzafame RJ, Blanche RR, Bodian AB, Chiacchierini RP, Fernandez-Obregon A, Kazmirek ER: The growth of human Scalp Hair mediated by visible red light laser and LED sources in males, Lasers Surg Med , 2013; 45: 487― 495(. レベルII) 75) Jimenez JJ, Wikramanayake TC, Bergfeld W, et al: Efficacy and safety of low-level laser device in the treatment of male and female pattern hair loss: A multicenter, randomized, sham device-controlled, double-blind study, Am J Clin Dermatol , 2014; 15: 115―127(. レベルII) 76) Kim H, Choi JW, Kim JY, Shin JW, Lee SJ, Huh CH: Low level light therapy for androgenetic alopecia: A24-weeks, randomized, double blind. Sham device-controlled multicenter trial, Dermatolog Surg , 2013; 39: 1177―1183(. レベ ルII) 77) Blum K, Han D, Madigan M, Lohman R, Braverman ER:“Cold”X5 Hair laser used to treat male androgenetic alopecia and hair growth: An controlled pilot study, BMC Res Notes , 2014; 7: 103(. レベルIII) 78) Lanzafame RJ, Blanche RR, Chiacchierini RP, Kazmirek ER, Sklar JA: The growth of human scalp hair in females using visible red light laser and LED sources, Lasers Surg Med , 2014; 46: 601―607(. レベルII)
~最後に~
2017年版で初登場の低出力レーザー治療。有用性を示す十分な根拠があることは、当公式サイトでも症例写真や臨床研究のページでエビデンスを開示していますが、日本の学会でも認められました。
副作用は肌荒れ蕁麻疹など比較的軽微なものなので、適切な機材を使用して行うことを勧められています。
日本のメーカーはレーザー育毛機の開発に遅れているため、米国のFDAでも承認されている育毛医療器レーザー「ヘアマックス」は、男性にも女性にも自宅ケアとして取り入れていただきたいです。